カラープランニングの現場から

カラリストを志す人のために、カラービジネス業界のキーマンの方々から、
実際のカラープランニングの実務をご紹介するとともに、培われた経験からの貴重なアドバイスをお届けします。


一般財団法人日本色彩研究所

シニアリサーチャー名取 和幸

名取氏

個人プロフィール

名取 和幸(なとりかずゆき)
1961年北海道出身。大学院修了後、一般財団法人日本色彩研究所に入所。現在、同研 究所研究第1部シニアリサーチャー。専門は色彩心理学(色の嗜好・認知、デ ザイン評価、UD・・・)。日本色彩学会、日本心理学会、日本建築学会他会員。著書に「色彩ワンポイント」「色彩科学入門」「記号学大事典」「色の百科事典」など(いずれも共著)。趣味は中古盤屋めぐり、オーディオ。

Q. 現在のお仕事の具合的な内容は?

メインとなる<マーケティング&リサーチ>では、商品や環境のカラー・デザインの現状分析と方向性検討、そして設計プランの評価などを行なっています。調査や実験を通して、カラーデザインの特性を感性面と機能面からとらえ、その色彩力を強化させることが主な仕事です。

手がけたモノを思いつくまま挙げると、家電、携帯、ランドセル、クルマ、化粧品、文具、建材、カーナビ、発電所、工場、料金所、橋、インテリア、店舗、景観色彩ガイド、幼児雑誌など、いろいろです。

もちろん<研究>もやっています。色の好き嫌い、面積効果、記憶色、色名、色のUD、絵本とカラーなど、かなり広範なテーマに関心があります。企業、学校、一般向けなどの<セミナー>を担当することも多いです。企業の提案アシストや書籍監修なども行ないます。

Q. 今のお仕事に携わった経緯は?

大学・大学院時代の専攻は心理学でしたが、パタンの視覚認知や運動軌跡の記憶などという、色とはあまり関係ないことを研究してました。ただ、大学のサークルではアニメ(米を並べて動かす米アニメとか)や絵本を製作していましたし、芸術と精神病との関係など、色を含む造形心理への関心はずっと強かったですね。ドクター5年目のときに色研で働けそうということになり、半年アルバイトで入ってから翌年入所しました。1990年のことです。

Q. 商品などの、色を決定するまでの業務の具体的な手順・流れは?

大まかには以下の流れです。

資料収集→現状分析(色・材料・仕上げ、機能性、心理評価や行動の分析など)→方向性検討→カラーデザイン→モックやCGシミュレーション画像の作成→事前評価→カラーデザインの修正→選定会議→決定。現在、大まかな流れについて、会社による違いはそれほど無いのではないかと思います。

Q. 使用するカラーコード・システム、参考資料などは?

汎用的に使うのはマンセル表色系です。それに準拠した「JIS標準色票」(当所製作)がスタンダードですが、さらに細かい検討には創立60周年の時に作られた「クロマコスモス6000」という6000色チャートを使うことも多いです(絶版)。

また色の傾向を系統色名やトーンから押さえたい場合は「調査用カラーコード」を使います。色のズレはやはりL*a*b*でしょう。

色のイメージや配色検討のときには、もちろんPCCS。あと、色の連想・イメージ・好みなど、100色分のカラーデータをまとめたデータベース「新編カラーレンジマニュアル100」もよく活用します。

Q. 業界特有のセオリーやタブーは?

色にとって光はとても大事な相棒です。光が無いと色は消えてしまいますし、ある光の下で同じ色に見えても、2つの材料が違っていたりすると、別の光源では色がずれてしまうこともあります。光変われば色変わります。光・照明を意識して色の表情を検討することは色の世界の大事なセオリーの一つです。

また、色は感覚ですから人によって見え方や感じ方に違いがあります。多様性を考慮するのも重要なことです。

色と色との関係性(配色)への注意も重要です。なお、これをしてはイカン、こうしなくていけない、という掟のようなものは特に思いつきませんでした。

Q. 必要とされるスキル(教育・知識・技術等)、経験は?

基礎体力として、色彩学の基礎を身につけて使えるようにすることは必須です。色の役割、色がどうして見えるか、どう感じられるか、どうやって表すか等々、随分とあります。それから仕事を通してトレーニングを積んでいきます。色は色だけを見て検討できません。色彩学のテキストにはない、材料、法律、調査や実験手法、流行や文化の情報などなどを身につけ、使いこなせるようにします。またコミュニケーション力もあるにこしたことはないです。

Q. 日々の情報収集や努力している物事は?

最初は意識的でしたが、そのうち自然とカラーデザインが目に飛び込むようになってきました。面白いものは写真撮ります。研究は学会誌から情報を収集します。目的を決めず書店でぶらぶらもいいですね。

それから、色は、あたたかい色、辛い色、静かな色というように、視覚以外の感覚ともリンクしています。だから、色の感覚を磨くには他の感覚も深めることも必要よね、うん、と言い聞かせ、好きな音楽を楽しみ、美味い食事やお酒を飲んでます(そうしたいという願望です)。すみません、ちっとも努力ではありませんでした。

Q. 同様の仕事を望む学生や一般の方へのアドバイスは?

極論すれば色を選ぶことは誰にでもできます。しかし一般の人はそれが本当に「良い色」であることをきちんと説得、説明できません。一目見て、ああいいなあと思っていただけるモノづくりが理想ですが、それでもそのモノが目指す目標にきちんと適合していることを、理論やデータを活用しつつ説明できなくてはプロではありません。

そのための基礎体力とトレーニングに加え、自分の得意技を身につけることが必要でしょう。関心を広く持つこと、コトバによるコミュニケーション力を高めること、人とのつながりを大切にすること(CBNにどうぞお入りください)、自分の好きなものをうまく活用することなど。得意技を磨いてください。

色の知識だけでは色の提案はできませんから。

Q. 仕事で利用する七つ道具を教えて下さい。

会社プロフィール

一般財団法人日本色彩研究所(所在地:埼玉県さいたま市岩槻区上野4-6-23)は、1927年に日本標準色協会として発足し、1945年に一般財団法人日本色彩研究所として改組しました。日本で唯一、色彩に関する公益法人として認可を受けた文部科学省所管の民間学術研究機関です。広範な領域の専門スタッフを擁し、基礎研究から色彩活用に関する応用分野までの様々な問題解決の要請に対して、実験・調査・設計・手法開発・色票製作などを通してソリューションを提供しています。

【一般財団法人日本色彩研究所】 http://www.jcri.jp/

名取氏へのご質問、ご意見はCBN事務局までお寄せください。