カラープランニングの現場から

カラリストを志す人のために、カラービジネス業界のキーマンの方々から、
実際のカラープランニングの実務をご紹介するとともに、培われた経験からの貴重なアドバイスをお届けします。


DICカラーデザイン株式会社

川村 雅徳

川村氏

個人プロフィール

川村 雅徳(かわむらまさのり)
1963年東京生。カラーマーケティングプロデューサー。青山学院大学文学部教育学科卒。第一法規出版株式会社(現・第一法規株式会 社)にて教育関係の書籍編集を担当。90年6月より社団法人日本流行色協会/JAFCA(現・一般社団法人日本流行色協会)に勤務し、広報部に所属。機 関誌『流行色』で、プロダクト製品におけるカラートレンドリサーチ、アナルシスを中心分野として執筆・編集業務を担当する。その後、06年4月 DICカラーデザイン株式会社に入社。カラー情報の収集・分析・発信をするとともに、カラー分析手法の開発業務(色域選択法/Gamut Grouping Method)、DIC Color Squareの管理・運営、カラーコンサルティングを手がける。『日経デザイン』誌はじめ、日韓中のデザイン誌への寄稿も行ってい る。日本色彩学会代議員。「カラー・ビジネス・ネットワーク」企画運営委員会メンバー。産業技術大学院大学非常勤講師。

Q. 現在のお仕事の具合的な内容は?

DICカラーデザイン(以下DCD)は「カラーデザイン」を中心に据えたクリエイティブコンサルティングを事業の1つの柱としています。

「カラーデザイン」というと、「綺麗」「かわいい」「美しい」「かっこいい」等々、感情的な効果によってその商品の魅力をアップさせる側面が注目されがちですが、DCDでは視認性、誘目性、識別性等といった色彩の機能的役割にも配慮することを大切にしています。前者は右脳的、後者は左脳的デザインアプローチといえるでしょう。

DCDの親会社であるDICはファインケミカルメーカーで理系企業といえます。こうした素性もDCDの特徴の背景といえます。私自身もクリエイティブコンサルティングの仕事に取り組む際には、左脳と右脳の両側面から事象を考えることを大切にしています。

Q. 今のお仕事に携わった経緯は?

もともとは教師になろうと考えて大学時代を過ごしましたが、卒業した時は教育関係書籍の「編集」という仕事に就きました。自分で企画を考え、執筆者を探し、テーマを共有し、執筆していただき、編集し、書籍というかたちあるものを生みだす。こうしたプロセス全体を行ってきたことが自分の仕事観になっているように思えます。

その後、縁あって、「編集」者として日本流行色協会の『流行色』誌の編集に携わるようになり、様々な業界の「色彩」の専門家とお付き合いさせていただきました。

現在のDCDにはカラーマーケティングプロデューサーという「色彩」の専門家として勤めており、時には講師としての業務をする機会もあります。仕事のキャリアとしては、ねじれ?があるような歩みになっています。

Q. 商品などの、色を決定するまでの業務の具体的な手順・流れは?

色(色覚)は視覚機能の一要素で、心理物理的な現象なので抽象性が強いものですが、商品の色は具象的なものです。思考としての色、つまり頭の中にある色は、さまざまな制約もあってイメージ通りの具体的再現ができるとは限りません。

例えば鮮やかなオレンジ色の印刷色を念頭にグラフィックデザインをしても、通常の4色のカラー印刷では再現色域外となってしまします。別の手法をとれば再現できても、コストという課題が生じています。

印刷で言えば、インキ、印刷方法、メディア(紙、フィルムの種類など)といった要素の関係性の中で色を決定することになります。イメージ先行で考えて、色材、加工方法、素材などの知識がないと、仕上がりにがっかりという結果になるかもしれません。そうならないためにも商品の色を考える場合には色再現に関係するさまざまな知識をもっていることが必要です。

Q. 色を考える上で大切なことは?

カラー検定がポピュラーになったことで、「色彩の教科書」が増えてきました。その多くは、抽象レベルで色を解説しています。例えば、色のイメージに関しての説明だと、「緑のイメージは、自然、エコ、平和…」といった具合です。

しかし、そうした抽象レベルでの色のイメージは、商品という具象物と、大きくイメージがかけ離れることは珍しくありません。具体物の色を考える際には、「色彩の教科書」に書いてあることはあくまで参考資料として考えることが肝要です。コンパクトカーのピンクは「かわいい」色かもしれませんが、同じ色を高級車に使っても同じイメージにはなりません。

色のイメージは、モノによっても異なりますし、人によっても受け止め方が違います。また、時代によっても色に抱かれるイメージはダイナミックに変化するのです。「色のイメージを固定化して考えないこと」。マーケットのグローバル化が進む中、この原則はますます大切になっています。

Q. 必要とされるスキル(教育・知識・技術等)、経験は?

視野を広くもつこと。ある商品のカラー開発をする時、ついついその商品およびその商品の市場のことばかりを考えがちになります。しかしユーザーはその商品単体でなく、自分のライフスタイル総体を演出する一部分として商品を捉えることが多いのです。色が好きな人は、デザインにおける色の価値を過大評価する傾向もあります。「たかが色。されど色」のスタンスで、身贔屓にならないように気をつけることも大切だと思います。

Q. 日々の情報収集や努力している物事は?

「なぜ」を意識すること。「わかった」と思わないこと。「なぜ」をあまり意識しなくなって、「わかった」と思ってしまうことは物事への興味、好奇心をなくすことにつながる気がします。そういう意味では抽象芸術と向き合うこともお薦めです。一見してわからないと思う物事を自分なりに理解しようと努力することでいろいろなことが見えてくると思います。DIC川村記念美術館にいらしてアートと向き合ってください。

Q. 同様の仕事を望む学生や一般の方へのアドバイスは?

色の仕事は儲かりません(笑)。ただ、例え儲かる仕事で自分で自分の仕事を嫌いになるような仕事は長続きしません。
人口減少高齢化社会における生き方は、やはりブータンを見習って「国民総幸福量」というものさしを普及させることでしょうか?
色彩感覚に関するトレーニングとしては、指で輪を作って開口色で色を見るクセをつけたり、デジカメの接写で色を採集するクセをつけるとよいかと思います。また大自然の色の原理を知ると、人間のDNAに刷り込まれた美意識に気づかされると思います。

会社プロフィール

DICカラーデザイン株式会社(所在地:東京都千代田区外神田2-16-2 第2ディーアイシービル1F)は、グローバル総合ケミカルメーカー「DIC」の資本で2000年に設立したカラーを専門とするクリエイティブカンパニー。色彩を左脳的な視点と右脳的な視点の両面からとらえることで、創造性をうみだすことを得意としている。ケミカルメーカーが母体という企業ならではの特徴が垣間見える。また、色材や加飾製品など、中間資材を中心としたモノを扱っているDICグループの総合力によって抽象レベルでなく、具象レベルでのソリューションが提供できる点も強みとなっている。業務内容は、カラーを基軸にしたブランディング、商品開発支援、マーケティング戦略支援など、多岐にわたっている。

【DICカラーデザイン株式会社】 http://www.dic-color.com/

【川村氏の寄稿文一覧】

※DICカラーデザイン株式会社サイト内へのリンクです。PDFファイルが開きます。

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