カラープランニングの現場から

カラリストを志す人のために、カラービジネス業界のキーマンの方々から、
実際のカラープランニングの実務をご紹介するとともに、培われた経験からの貴重なアドバイスをお届けします。


寿屋フロンテ株式会社

用品、内装材デザイン開発部長安岡 義彦

安岡氏

個人プロフィール

安岡 義彦(やすおかよしひこ)
武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒 株式会社川島織物で約22年デザイナーとして日系各自動車メーカーに対してグローバルデザイントレンドを背景にテキスタイルを中心とした自動車室内のトータルインテリアコーディネートを提案。海外テキスタイルメーカーとのコラボレーションによるイヤーズカラープレゼンテーション等により自動車量産採用実績多数。 2007年から株式会社タイカでチーフデザイナーとしてプロダクトCMF(カラー、マテリアル&フィニッシュ)デザインを自動車、家電メーカーに提案。新たなプロダクトマテリアルの量産採用実績を伸ばす。 2015年から壽屋フロンテ株式会社に入社。現在、用品内装材デザイン開発部長として自社のデザインディレクションからマネージメントに従事する。  
・東商カラーコーディネーター認定講師
・1級カラーコーディネーター(商品色彩)
・AFTカラーコーディネーター認定講師
・AFT1級カラーコーディネーター
・色彩学会正会員
・インテリアコーディネーター

Q. 現在のお仕事の具合的な内容は?

自動車内装材及び内装部品メーカーのデザイン開発職になります。

自動車内装用の様々な素材開発とインテリアコーディネーションの両軸に足を置いてバランスを取りながら先行的なCMFデザインを開発して自動車メーカーに提案します。

自動車メーカーからは、これから世の中に出る車種のコンセプトが、開発スタート時に内装材メーカーに展開されます。ほとんどの場合、コンペなので自動車メーカーからのコンセプトの咀嚼力とそれを上回る提案力が、コンペ獲得の決め手になります。

コンペに勝ち残り、その車種の量産に向けたCMFデザインのチューニング、技術課題の解決を行い、量産用のデザインマスター(量産見本)を作るところまでが仕事です。

車種の開発スタートからデザインマスターの完了までが1年半~2年、その後の量産準備に約1年かけて量産が始まるのが基本的な開発スケジュールですが、その前に先行的な社内開発を進めて車種コンペ開催時期に備えます。

カラーは、もちろんですが色付けする素材の開発ウェイトが大きいです。

質感なくしてカラーは語れない、まさにカラー、マテリアル、フィニッシュを、身を以て体現しています(笑)。

Q. 今のお仕事に携わった経緯は?

元々は、現在勤めている会社の競合テキスタイルメーカーにいました。 そこでテキスタイルプロダクトの現場1年、設計1年の経験を積んだ後に自動車メーカーのデザイン開発窓口として 自動車シート向けテキスタイルデザイン企画、提案に携わったことが現在の仕事の出発点になります。

当初は、新作テキスタイルのハンガーサンプルをテーブルに並べて自動車メーカーデザイナーに 使い方を想定したセレクトを委ねるような提案でしたが、次第にシート材のコーディネート提案から インテリア素材全体のコーディネーションを自動車コンセプトの設定から行いインテリアパース+シートモデル提案 という方向に進化していきました。

自動車シート向けテキスタイル以外の素材も含めたインテリア全体のCMFコーディネートを計画するうちに杢目、 金属をはじめとする加飾部品に興味を持つようになり樹脂加飾メーカーに転職しました。そのメーカーは、 自動車はもちろんですが家電、雑貨等も手掛けていましたので自動車以外のプロダクトCMFデザインへの興味もあっての転職でした。

縁があって寿屋フロンテに転職したのが2015年春です。寿屋フロンテは、シート向けテキスタイル以外にカーペットをはじめ 内装部品全体を手掛けているこが大きな特長です。現在は、今までの知見を後進のデザイナーに伝えることと同時に 自動車インテリアトータルデザイン開発の新たな領域を確立する取組みを進めています。

Q. 商品などの、色を決定するまでの業務の具体的な手順・流れは?

先行提案については、モーターショー、量産車の外板色、内装色と全体のデザイン傾向を見ながらファッション、 インテリア、建築等のデザイントレンドのエッセンスを取り入れて提案品が一番魅力的に映るCMFデザインを、 自動車インテリア素材全体を想定して選びます。

量産する自動車については自動車メーカーが設定した内装基準色に対して新鮮に見えるベースカラー、 アクセントカラーと色を施す素材と併せて企画します。現在は、量産車でもインストパネル、 ドア、シートの素材の組み合わせ、ボディカラーとのコーディネーションが多様になってきましたので 全体のコーディネーション力が、強く求められます。開発提案した素材と色については、 自動車メーカーの開発ステップごとにメーカー全体の検討会の評価のフィードバックを受けて徐々に絞られていきます。

1 2 3

Q. 使用するカラーコード・システム、参考資料などは?

自動車メーカーとは、PANTONE、染色工場とは、SCOTDICポリエステル色票での 色の伝達が多いです。SCOTDICについては、製造中止になりましたがほとんどの染色工場は、 自社レサイプとSCOTDICとのカラーマッチングが出来ています。以前のようにカラースワッチを 切ってオーダーシートに張り付けることはしませんが、お互い持っている色票のブックのSCOTDICナンバーを 使ってやり取りしています。

Q. 業界特有のセオリーやタブーは?

やはり、相当現場主義です。扱っている素材が糸偏なのでなかなか理屈通りにいきません。 繊維は、生き物とよく言いますが、微妙な温度、湿度、時間の変化で色も質感も変わりますし、 季節、風土、水の質、機械の違いも大きく影響します。再現性を厳しく要求される自動車業界の中で 一番工業製品らしくないかも知れません(笑)。現場の人達のメンタリティも昔気質です。 メールや電話で何度もやり取りするより現場に足を運んで解決する場合がほとんどなので現場への出張は多いです。

Q. 必要とされるスキル(教育・知識・技術等)、経験は?

工業製品としての最終的な姿、自動車インテリア全体のコーディネートを想像するイマジネーションと各部材の素材、 加工特性を熟知する専門性の両輪で回しています。開発課題として提示された無理難題?を解決する力が求められます。 この積み重ねが顧客からの信頼獲得になります。そして量産の受注獲得が現場からの信頼獲得になります。 日々このスパイラルを上向きに持って行くことで自分のやりたい仕事を具現化することが出来ます。 逆に下向きの負のスパイラルに陥るとなかなか抜け出せなくなって辛い(笑)。

経験知、現場知で動かす仕事ですが、日々進めている仕事を体系立てて解説している書籍は、 自分の頭の中を整理する意味で大変役に立ちます。プロダクトのCMFデザインについての書籍は多くはありませんが、下記2点は大変参考になります。

  • 「カラーコーディネーションの実際 第二分野商品色彩」東京商工会議所編
  • 「成功するプロダクトのためのカラーリング講座」小倉ひろみ著

 

トレンドを把握するための参考資料としては業界でお馴染みの洋書、デザイン書籍を定期購入していると思いますが、 自分自身のデザインの発想の拠り所としては日本の伝統的なデザインを素材、技術、用途、意匠の4軸で整理分類して 美しいモノクロームの写真で伝えてくれる下記をとても大事にしています。

  • 「日本のかたち」企画、撮影:二川幸夫、文:神代雄一郎、構成:細谷巌

 

Q. 日々の情報収集や努力している物事は?

話題性のあるモノ、人から聞いた情報等でちょっと心に響いたものは出来るだけ見て触って感じることを心掛けています。 好奇心を原動力にして色々なことを面白がりながら身体を動かすことが大事です。常に新しい情報が動いて止まらないように 努力しています。特に新しいことをする機会は、本業以外でも出来るだけチャレンジする、やらせて頂く気持ちを持つこと大事にしています。 一昨年は、色彩学会で畑違いの環境色彩について調査、まとめ、発表に挑戦しました。

昨年は、母校でCMFについて特別講義を行う機会を頂き何コマか引き受けさせて頂きました。普段接することのない若い学生さんを 相手に講義で伝えたい内容を講義資料にまとめること、講義を行って学生さん達とコミュニケーションすることは、貴重な経験でした。 お陰様で今年も同様の機会を頂いています。

自分の引き出しを増やすための労を惜しまないことが座右の銘?でしょうか(笑)。

Q. 同様の仕事を望む学生や一般の方へのアドバイスは?

コミュニケーション力を磨いて下さい。人の言いたいこと、思っていることを理解して共感する想像力。 自分の思いを伝えるボキャブラリー、コミュニケーションツール。

饒舌である必要は全くないと思います。自分らしいコミュニケーションのスタイルを見つけてください。 相手の立場を想像しながらキャッチボールを重ねる中でどうすれば共感してもらえる新しい解決が出来るか? 見えてくると思います。安心感とサプライズのバランスが大事だと思います。「こんなものが欲しかった!」 と言われる顧客ニーズの半歩先を行く提案が、限られた時間の中で効率的に恒常的に行えることが理想ですね。

それと繰り返しになりますが好奇心を絶やさないことです。

また、私も得意ではありませんがコミュニケーションの相手は日本人だけではありませんので英語must、 中国語まで出来ると怖いものなしですね。

Q. 仕事で利用する七つ道具を教えて下さい。

オン、オフ共にいつも持ち歩いているのは、以下のとおりです。

  • 折りたたみスケールルーペ:どうやってできている?と素材の構造を見るときに。
  • 小さなハサミ:気になる素材を見つけたらいつでもカットできるように。
  • コクヨキャンパスノート5号:思いついたことをすぐにメモ、スケッチできるように。
  • スマホ:写真、情報収集、計算、スケジュール、連絡等。

*スマホが便利すぎて7つも道具はいらなくなりましたね。

会社プロフィール

寿屋フロンテ株式会社(本社所在地:東京都港区西新橋1丁目6-13) 従業員366名(グループ全体2010名)
昭和20年の創業以来、「カーインテリアのパイオニア」としてフロアカーペットやアクセサリーマット、 シートファブリック等の自動車内装部品を手掛ける。現在は日本を含め、
中国/タイ/インドネシア/北米/メキシコとグローバルに6か国/12会社/17拠点を展開して2016年度は70期をむかえる。
また、シートファブリック事業は北米SAGE社、カーペット事業は仏トレーヴ社との
グローバルアライアンスにより世界中で製品供給、品質保証を可能にして自動車メーカー各社の世界戦略に対応する。

寿屋フロンテ株式会社
http://www.kf-k.co.jp/

佐藤氏へのご質問、ご意見はCBN事務局までお寄せください。